慢性連日性頭痛に対する杭うつ薬の有用性の臨床的検討-SNRI (ミルナシプラン)とSSRI (パロキセチン)の相互比較一

摘要

慢性疼痛に対して，SNRIの有効性の報告はあるが,SSRIも含め頭痛に対しての両薬剤の有効性についての臨床的なEBMはまだない。頭痛診療においては，片頭痛に重畳した慢性連日性頭痛の治療に難渋することが多く.治療法においてもまだEBMが確立されていない。今回，慢性頭痛，特に慢性連日性頭痛に対して，SNRI (ミルナシプラン）あるいはSSRI (パロキセチン）を投与し，頭痛の程度をVAS (visual analogue scale)により投与前後で比較検討を行い，2剤の有用性と優位性の有無について検討した。対象は.A群：ミルナシプラン(1日25?50mg,頭痛の改善度によりlOOmgまで増量）とB群：パロキセチン(1日10?20mg,頭痛の改善度により40mgまで増量）とし，あらかじめランダムに割り付けられたチャート順に投与し，症状の改善に伴い薬剤の漸減を行った。投与前，投与後2 週，4週.3力月，6力月，投与終了時に，VASにて頭痛の程度を0~100mmの間で判定した。A群105例，B群95例の計200例の内，再度来院しVASを測定し得た患者はA群51例(48.6% ：平均38.0+-13.4歳），B群38例(40.0% ：平均35.1 +-11.8歳）であった。投与前VAS は，A群において49.1+-19.0mm, B群において45.0+-19.6mmであった。投与前と投与終了時のVASの差はA群において平均30.3+-25.6mm, B群において平均27.1 +-28.8mm低下し，両群ともに投与前より有意に減少し両群間には有意差はなかった。以上の検討結果から，従来漫然と鎮痛薬が使われ治療に難渋していた片頭痛に重畳する慢性連日性頭痛の治療薬として，SNRIとSSRIの有効性が明らカゝに示された。今後の慢性連日性頭痛に対する治療薬としての雨薬剤のEBMが示された。