下痢?便秘の初療における診断の進め方（鑑別）

摘要

下痢?便秘ともに日常診療においてよくみられる症状であるが，緊急性を要する症例や生命予後にかかわる重大な疾患が潜んでいる可能性があることを常に念頭におく.下痢は発症機序から，①滲出性下痢，②分泌性下痢，③浸透圧性下痢，④腸管運動異常 に伴う下痢に分類できる.便秘は，腸管の物理的狭窄による通過障害，②腸管運動異常による腸管輸送能の低下， ③排便機能の低下，三つの要因のいずれかあるいは組み合わせによって発症する.その 病態により，特発性便秘（単純性便秘，弛緩性便秘，けいれん性便秘，直腸性便秘）と続発性便秘（器質的疾患に伴う便秘，機能性疾患に伴う便秘，薬剤性便秘）に分類できる.下痢?便秘患者を診察するにあたり，最も重要な点としては，緊急性の有無を判定することにある.下痢では脱水症の有無，電解質異常の有無，便秘では腸閉塞の有無，捻転 の有無を速やかに診断することが初期診療において重要であると考える.