大規模臨床試験の意義と限界

摘要

大規模臨床試験成績は.高血圧管理の根拠の科学的な実証として臨床的な意義が高い.これらの成績やそのメタアナリシスをもとに,血圧管理基準の設定および降圧薬の評価が行われている. HOT研究, Staessenらの介入試験のメタアナリシスでは,ともに降圧度が大きいと心血管事故の抑制効果も大きいとされている.従来の降圧薬(利尿薬, β遮断薬)と同様の有効性がACE阻害薬, Ca拮抗薬においても認められている.さらに,アンジオテンシンIl受容体拮抗薬の心肥大合併高血圧例での有効性, ACE阻害薬·利尿薬併用の脳卒中既往例における血管事故の抑制(PROGRESS)が報告され,臨床成績の蓄積は著しい.しかし,最近の大規模臨床試験成績をもってしてもなお十分とはいい難く,多くの高血圧管理指針においてconsensus processが少なからず含まれる.本稿では大規模臨床試験の意義と限界を述べるが,欠落している部分は,進行中の試験により次第に補完されるものと考える.