免疫学的側面からみた樹状細胞の系統発生的進化

摘要

獲得免疫応答の始動において強力な抗原提示細胞として働く樹状細胞（dendritic cells：DC）は．ウイルスや細菌の感染に対する生体防御においても自然免疫応答を増強する役割をもつことが明らかになりつつある．このDCは食細胞系のマクロファージと近縁の細胞として知られるが，近年の研究ではリンパ球系と関連するサブセットの存在も示されており，細胞分化と機能ならびにその制御はさらに多様かつ巧妙であることが予想される．しかし，このようなDCに関する研究は哺乳動物のなかでもマウス，ラット，ヒトを中心に進められており，進化経路の異なるほかの動物種においては機能面の研究までは至っていないのが現状である．そこで本稿では，DCの系統発生あるいは個体発生における出現と免疫系の発達との関連について考えてみる．