心不全の予後予測因子，血中心筋トロポニン

摘要

トロポニンは心筋フィラメント上の蛋白であり，トロポニンⅠ，T，Cで複合体を形成している．トロポニンT（分子量37kDa）はトロポニンⅠ（分子量21kDa）とトロポニンCをトロポミオシンに結合し，トロポニンⅠはアクトミオシンのAT馳se活性部位を抑制することによりアクチンとミオシンの結合を抑制している．心筋トロポニンTは約94％が心筋アクチンフィラメント上の構造蛋白であるが，約6％は細胞質中の可溶性分画に含まれ，心筋トロポニンⅠの可溶性分画は2．8％と報告されている1）．トロポニンの流出機序は，完全に細胞死を起こした心筋細胞からだけでなく，障害され細胞膜透過性に異常をきたした心筋細胞からも漏出すると考えられる．しかし，現在もその詳細は不明であり，またこのような心筋傷害がどの程度可逆的であり，心筋細胞がどの程度生存できるかも不明である．