Prostate specific antigen(PSA)検査の普及に伴い早い段階の前立腺癌が多数発見されているが,これらの癌には患者が天寿を全うするまで症状が現れないものも含まれている.前立腺に限局した癌に対する対応には,経過観察,根治的前立腺摘除術,放射線治療があるが,三者の治療成績には大差がない.利術,放射線治療のいずれの方法で治療しても数年後には,性機能,排尿,排便などにかなりの頻度で障害が生じる.水素の原子核である陽子を用いる陽子線治療はX線と比べ線量分布が優れているので,X線に比べて局所制御と障害発生において優れていることが期待される.T3-4前立腺癌患者を対象に,X線骨盤照射後の陽子線追加照射とX線追加照射を比較した無作為化比較試験では,低分化癌の患者に対してのみ陽子線治療成績が優れていた.本当に治療が必要な患者を障害を少なく治療するという目標に向けて陽子線治療は線量分布の優位性を生かして貢献できる可能性がある.
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