生殖補助医療のあり方 法学的 私的管見

摘要

厚生科学審議会先端医療技術評価部会生殖補助医療技術に関する専門委員会「精子 卵子 胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書」に照らして，生殖補助医療に関わる若干の論点について個人的な見解を述べる．まず，生殖補助医療を受けることができる者に関しては，医療の役割が身体機能の不調 不全を補うことにとどまることから，不妊症のために挙児できない者に限られるべきである．兄弟姉妹等からの配偶子の提供については，奨励すべき事柄とはいえないとしても，遺伝学的に類似の配偶子による挙児を求める当事者の希望の尊重などの点から,国として制度的に禁止することは望ましくない．出自を知る権利に関しては，その認否双方に理由があり，判断に苦しむ．最後に，代理懐胎（代理母 借り腹）については，それが約束＝契約に依存し，親子関係に関わる制度として不可欠な安定性を欠いている点から認められないと考える.