Dirofilaria repensにより頭部に皮下結節を形成した日本人女性におけるィヌ糸状虫症の1例

摘要

42歳，女性.右側頭部に1cm大の可動性不良な皮下結節を形成し，切除目的に帽状腱膜 を切開したところ，内部から12cm長の白色糸状虫が排出された.虫の形態，患者血清中の抗 体価および虫体の遺伝子解析でィヌ糸状虫の1種であるDirofilaria repensと同定した.ィヌ 糸状虫はィヌを固有宿主とし，蚊に媒介される寄生虫で，代表的な2種は皮下に結節を形成す るD. repensと，右心室や肺動脈に寄生するD.immitisである.ヒ卜にも稀に感染するが十分 に成熟しえず，D. repensでは幼虫爬行症や皮下結節を生じ，D.immitisでは肺動脈末梢に異 物肉芽腫を形成する.自験例のようなD.repensは本邦には分布せず，ヒ卜感染の報告は過去 に2例のみである.虫の遺伝子配列がイタリアの報告例と100%一致したため，西欧渡航時の 感染も考えられた.D.repensによる皮下結節の治療は外科的切除である.皮下結節の鑑別の1つとなり，報告する.