心筋梗塞の発症因子，遺伝因子

摘要

薄い線維性被膜に被包された豊富な脂質コアを有する冠動脈不安定プラークの破綻"が心筋梗塞 発症の主要なメカニズムである.心筋梗塞発症因子としては，筆者らが行った多施設共同後向き観察研究Japanese Acute Coronary Syndrome Study (JACSS)から，わが国においても， 高血圧，喫煙，糖尿病，,族歴，脂質異常症などがあげられ，これら冠動脈危険因子の厳 格な管理が日本循環器学会ガイドラインでも一般療法として推奨されている. わが国における心筋梗塞発症因子として特徴的なのは冠攣縮の存在であり，当科の検討では，この 人種差に遺伝子変異の存在が寄与している可能性が示唆される.したがって心筋虚血誘発?急性冠 症候群発症の一因として，常に冠攣縮の存在を念頭に置き，病歴の聴取，アセチルコリン負荷 試験などの冠攣縮精査の適応判断，ニトログリセリン舌下による胸部症状緩解の有無の確認， 禁煙指導などを行うことが，プライマリ?ケアにおいてもきわめて重要である. わが国における心筋梗塞の発症リスクとなる新たな遺伝的要因の探索が，一塩基多型（single nucleotide polymorphism ： SNP)の網羅的解析として行われ，これまでに複数のSNPの心筋梗 塞発症との関連が報告されている.これらの心筋梗塞に関連する遺伝子がわかれば，創薬への発展 や心筋梗塞発症リスク予測の高精度化が期待される.