現実味を帯びてきた医療過誤訴訟

摘要

本稿では，医療過誤訴訟に関する昨日（昔）の文献と今日（現在）のそれとを比較し，今後の展望を予測してみた.昭和8年の文献1)には，「患者が医師の診療過誤を主張して或は告訴を為し，又は損害賠償の訴訟を提起する傾向が近年著しく増加」してきたとある.その背景として，治療費不払いのまま転医する患者や宣伝により増患を図る医師が出始め，診療が営業的になってきたことを指摘している.そうして，医療の結果への不信が増加し，医師患者関係が「情宣（まごころ）」で結ばれなくなつてきたので，都会の医師は損害賠償訴訟の対象となり， 地方では刑事訴追される傾向を認めるようになつてきたとのことである.