Focal nodular hyperplasia類似の画像および肉眼像を呈し，lamellar fibrosisを伴う中分化型肝細胞癌の1例

摘要

症例は64歳，男性．腹部超音波検査にて肝S3に5×3cm大の腫瘤が認められた．画像上はfocal nodular hyperplasiaとfibrolamellar hepatocellular carcinomaの鑑別が困難であったが，AFPおよびPIVKA Ⅱが上昇していたため，肝細胞癌が疑われ，肝外側区域切除術が施行された．この腫瘤はlamellar fibrosis（層板状線維化）と中心瘢痕を伴う中分化型肝細胞癌であった．中分化型肝細胞癌の胞巣の一部は高度のリンパ球（CD8陽性Tリンパ球）浸潤，リンパ球浸潤を伴う層板状の線維あるいはリンパ球浸潤を伴わない層板状線維化によって索状に分断されており，これらは連続性に移行していた．これは，lamellar fibrosisは浸潤したリンパ球によって癌細胞が徐々に破壊され，そこに線維が繰り返し増生した結果であることを示唆していると考えられた．