六君子湯（上腹部不定愁訴)

摘要

消化器症状を訴えながらも，血液検査や内視 鏡検査，超音波検査などの検査で異常が指摘できない病態は，機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorders, FGIDs)と総称され る。FGIDsのうち，食後膨満感，早期飽満感， 心窩部痛，心窩部灼熱感などを訴える一群は 機能性ディスぺプシァ（functional dyspepsia, FD)と呼ばれ，FDはさらに，食後のもたれ感 や早期飽満感を主症状とする食後愁訴症候群 (postprandial distress syndrome- PDS)と， 心窩部を主症状とする心窩部痛症候群（epigastric pain syndrome： EPS)の2つに分類される。 近年，六君子湯のFD，特にPDSに対する有用 性と，その機序に関する研究が進んでいる。そ こで本稿では，六君子湯の上腹部愁訴に対する ェビデンスと上手な使い方について，FDを中心に概説する。