成人先天性心疾患における心臓血管外科の特徴と対応-再手術の意義と実際

摘要

先天性心疾患の頻度は，出生時の0.41%と 言われている.そして近年の産科医，新生児科 医，小児循環器科医，小児集中治療医そして心臓 血管外科医の集学的な治療管理によりその90% を超える症例が成人期に達するようになった.最 近の統計で，アメリカ合衆国では成人期に到達し た先天性心疾患(成人先天性心疾患）の概数は100 万?300万人と言われ，これは小児期の先天性 心疾患症例数を凌駕している.これには過去20 年における外科手術手技の改善とともに，複雑心 奇形に対する生存率が劇的に向上したことが大ぃ に関与している.さらに外科手術のみならず， カテーテル治療や外科との協力のもとに行われる ハイプリッド治療の開発は重要な治療成績向上の 因子である.また以上の治療を支えるのは集中治 療管理であり，この進歩も成人期への到達率を高 めるものである.このように小児期での成績 向上が認められ，多くの症例が成人期に到達する にもかかわらず，心房中隔欠損症を除き先天性心 疾患の症例は一般の生命予後よりも短いという報 告がある.