ヒト線条体における非モノアミン作動性芳香族アミノ酸脱炭酸酵素ニューロン（Dーニューロン）の局在と機能的意義

摘要

ヒトの線条体，特に腹例の側坐核には，第二段階モノアミン合成酵素である芳香族Lノアミノ酸脱炭酸酵素を含有するが，第一段階合成酵素のチロシン水酸化酵素やトリプトファン水酸化酵素を含有しないニューロン（D－ニューロン）が多数存在する．これらはL－dopaや外来性droxidopa（L－threo－DOPS）などのアミン前駆物質を取り込み，ドーパミンやノルアドレナリンに変換し，パ－キンソソ病薬物治療の効果発現に関与すると推定される．側坐核は，精神分裂病や薬物依存の発症に関わることから，その発症機序にDーニューロンが関連している可能性がある．Dーニューロンが，加齢や変性に対する代償機能を有する多能性細胞である可能性も示唆されている．本稿では，ヒト線条体Dーニューロンについて概説しその機能を考察した．