生殖補助医療（ART）における良好胚選別を目的とした前核期評価の新基準

摘要

ARTにおける移植胚の精度の高い判定基準を確立する目的で，前核期における新しい評価法を考察し検討した．75症例78周期491個の胚の前核期評価を行った．判定基準は，両前核の大きさが［同じ（A），異なる（B）］，両前核間距離が［常に接着（a），辺緑のみ接着（b），開離している（c）］，核小体の大きさ，分布，数が［同期状態（5），同期過程にある（3），非同期状態（1）］と評価した．桑実胚/胞胚発育率は，（A），（a）または（b），そして（5）と評価された胚が有意に高かった．妊娠率は，（a）または（5）を移植胚中に含む症例において着意に高かった（（a）あり83．3％vs（a）なし25．9％，p＜0．05，（5）あり81．5％vs（5）なし19．6％，p＜0．05）．次に移植胚が2個とも分割期形態不良胚（Veeck分類3～5）の症例を前核期評価で後方視的に妊娠率を再検討した．その結果，（5）を含んでいた場合が含まない場合より，また移植胚が2個とも分割期形態良好胚の症例では，（a）を含む場合が含まない場合より有意に高かった．我々の考察した前核期胚評価法のみでも高精度な良好胚選別効果が期待できるが，さらにVeeck分類と本評価法を細み合わせて2段階で胚選別を行うことで，従来，移相胚の選択に困難を感じた場合においても本法は有用であると思われる．