シンポジウム1「反復不成功例に対する対応」4）反復ART不成功例に対するGnRHアンタゴニスト使用卵巣刺激法

摘要

反復ART不成功は患者のみならず我々ART従事者にとっても大きなストレスとなる．その理由はこれらの症例に妊娠·出産の可能性があるのか否か，そのための治療方法があるのかについて，EBMに基づくはっきりとしたデータが無いことによる．欧米ではARTを一定の回数実施しても妊娠に至らない場合は配偶子提供ⅠVFなどのオプションがあり，患者もそれを理解するため，わが国のような回数の多い反復不成功例は少なく，さらに情報が限られる原因ともなっている．HARTクリニックではARTは妊娠·出産のみが目的ではなく，真の不妊の原因を追求し，現状で妊娠が不可能と判断すればARTの治療中止を考慮する方針をとっている．真の原因とは1．Tubal dysfunction,2.Uterine dysfunction 3．Oocyte dysfunction 4．Sperm dysfunctionである．すなわち従来の病理学的診断ではなく，ART施行によって初めて明らかになる機能（質）の診断である.反復不成功例で特に問題になるのが3の卵の質であり，もし異常卵しか採取できないような症例（高齢，反応不良例など）ではARTによっても妊娠は期待できない．良質胚移植が妊娠成立の絶対億件である以上，いかにして良質卵を採取するかがART成功の基本であることはいうまでもない．その意味で，反復不成功例に同じ卵巣刺激法（COH）を繰り返すことには疑問がある．