子宮内膜厚と子宮放射状動脈血流との相関に対する研究：クエン酸シルデナフィル膣座薬は両者を改善する

摘要

子宮内膜発育不全は着床障害の重要な病因であるが，有効な治療法は確立されていない．そこで子宮内膜厚（EM）と子宮動脈血流との関係について検討すると共に子宮内膜発育不全症例に対し子宮動脈血流の改善を目的としてクエン酸シルデナフィル（viagra）腰座薬を投与しその有用性につき検討した．（1）排卵前のEM8mm以上の正常（A）群70例と8mm未満の子宮内膜発育不全（B）群13例について子宮動脈上行枝および子宮放射状動脈のresistance index（RI）倍を測定した．子宮放射状動脈RI値とEMの問には右意の負の相関（R~2＝0．46，p＜0．01）を認めたが，子宮動脈上行枝RI値とEMとの間には相関を認めなかった．子宮放射状動脈RI倍はA群に比しB群で有意の高値を示した（0．73±0．07vs．0．87±0．03：p＜0．01）．（2）RI値の高い子宮内膜発育不全症例5例に対してviagra膣座薬（25mgX4回/日）を投与した．投与方法はゴナドトロピン製剤による排卵誘発開始日よりhCG投与日までとした．Viagra投与により子宮放射状動脈のRI値は有意な低下を示し（0．89±0．04vs．0．77±0．02，p＜0．01），子宮内膜厚は有意に増加し（6．8±1．7mmvs．9．2±0．6mm，p＜0．05），4症例で妊娠が成立した．子宮内膜発育不全に対する子宮放射状動脈血流の関与が示唆され，via－gra股座薬は子宮血流の改善と共に子宮内膜発育不全症例に有効な治療法となる可能性が考えられた．