膵臓移植における血栓症の現況と対策

摘要

膵臓移植は1型糖尿病の根治療法として確立され，世界で既に23,000例余りが行われている。わが国でも1997年の臓器移植法の施行により脳死体からの臓器提供が法的に可能となり，以後50余例の脳死下膵臓移植が実施されている。膵臓移植の術式や術後管理はほぼ確立されているが,他の臓器移植同様術後さまざまな手術合併症が起こり得，また臓器移植の中でも最も再手術率が高レゝ移植手術といわれている。膵移植後の手術合併症として血栓症，感染，グラフト膵炎，縫合不全，後出血などがあるが，この中でもグラフト血栓症は頻度が高く，いったん発生すれば高率にグラフトロスにつながるため，いかにこれを予防し，また早期発見，治療するかが膵臓移植成功の鍵といっても過言ではない。本稿では膵移植後血栓症につき概説する。