竹澤さだめ－波体不自由児療育事業に情熱を燃やした女医

摘要

医学は常に更新を求め，誤りに満ちた過去は顧みられないことが多い．本書を読んでも明日の診療に役立つわけではない．しかし整形外科医と社会とのかかわりに興味のある人，そういう興味はないが伝記が好きという人には紹介したい本である.整形外科医の伝記はまれであり，天児民和九大名誉教授の著作を除けば，ほとんどは遺族か門下が編集した私家版である．本書はその点でも異色である．著者は障害児教育に長年にわたり従事した在野の史家である．障害児教育の歴史をたどる研究の中で，本書の主人公である竹澤貞女と出合い，その生涯を丹念に追った成果が本書である．