同胞内に発症した注意欠陥·多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder） その表現型の差異と注意欠陥·多動性障害の遺伝モデルからの考察

摘要

注意欠陥·多動性障害（attention deficit hyperactivity disorder；ADHD）は，児童思春期で最も頻繁に診断される精神科疾患である。 近年，ADHDは，子どもだけの疾患としてではなく成年期に至っても多くの患者は機能上の障害を残し慢性的な疾患として考えられるようになってきた。 ADHDの発症に関して多くの仮説があり検証が行われてきたが，遺伝子が発症に大きくかかわることが明らかになってきた。 この報告では，同性の同胞がともにADHDを発症した症例を報告する。この症例では、同胞間の発症にもかかわらず，症状には違いが認められた。 実際の臨床場面ではこのような同胞間の表現型の違いにしばしば遭遇することがある。 環境要因を考慮しながら遺伝モデルを用いて事例の発症メカニズムについて考察を行うとともに，ADHDの分子遺伝学的な知見についても文献的な考察を行った。