思春期?青年期2例からみる「診断保留」の意義 疾患概念の変遷と治療介入の柔軟性

摘要

思春期?青年期に初診し，初期統合失調症や内因性若年一無力性不全症候群，精神病発症リスク状態（at-risk mental state ： ARMS)を疑った2例を報告した。21歳男性例は，体感異常が主訴であり，当初は内因性若年一無力性不全症候群を疑った。身体疾患の検 索を行った後，セロトニン再取り込み阻害薬を開始したところ奏効した。16歳男性例は， 思考不全や関係念慮様の症状があり，初期統合失調症もしくはARMSを疑った。心理検査 を施行した後，少量の抗精神病薬を開始したところ奏効した。精神科診断概念の変遷を概 観したうえで，症例によっては確定診断を急がず，診断保留とすることの意義を指摘した。 病態を類推しながら治療方針を立て，薬物の治療反応を確認していく重要性を考察した。