PTSDになる人とならない人

摘要

外傷的出来事の種類によらず，同じような出来事を体験してもPTSD (Posttraumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害）になる人 とならない人がいるのは疫学的事実である。例 えばわが国における例では，阪神淡路大震災に おいて自宅が全壊ないし全焼した被災者のうち PTSDを認めたのは9.6%であり，救命救急セン ターに入院した重症交通外傷患者では1力月後 の急性ストレス障害は9.0%， 6力月後のPTSD は8.5%の割合であった。つまり，明らかに 深刻なストレスに晒された場合でも，PTSDを 発症する者は一部に限られており，大多数の者 は一過性に軽度のストレス反応を生じることは あっても，じきに無症状ないしはサブクリニ力 ルな症状レベルにまで自然回復するのである。