鹿児島県における司法精神医学の現状と課題　司法精神医学教育システムおよびネットワークの確立に向けて

摘要

本邦では，司法精神医学の研究や教育に携わる機関が乏しいとの指摘があるように，鹿児島県（本県）でも系統だった教育システムは確立されていない。 そこで，今回，アンケート調査を実施し，本県における司法精神医学の現状と課題について検討した。 さらに，司法精神医学教育システムおよび，そのネットワーク作りに必要な具体的な方策を抽出した。 その結果，本県では現状のままで，今後増加が予想される精神鑑定業務には対応できることが判明した。司法精神医学教育に関しては，鑑定医の養成のみならず，卒前教育の段階からカリキュラムなどを検討する必要があると思われた。 また，鑑定医の技能向上のためにも，医療関係者と司法関係者の意見交換の場を設定し，司法精神医学教育の中核的施設·部署の設置を推進していく必要があると考えられた。 最後に，今回は具体的に事例の提示を行わなかったが，医療観察法が適用された事例を検証することは，精神医療水準の向上，法律の適切な運用，さらに司法精神医学教育に有益であることを示唆した。