陰翳礼讚

摘要

recent memoryの衰えをあた力、も補ぅ力、のように remote memoryが復古することがある。中学で英 語をならい初めたのはわが国が大東亜戦争に負けて， いまだ連合軍の占領下にあった頃である。アメリカの ものは何でも崇敬の的になって，日本に古くからあった ものは打破すべきものばかりであった。そんな頃，お そらく新聞でみた記事であろうが，京都大学フランス 文学の教授桑原武夫の言説が大変すがすがしく響 いたのを覚えている。谷崎潤一郎は伝統的な京都の 料亭の暗がりがかもし出す陰翳を讃美するが，そこに 働く若い芸妓は行灯の薄暗がりを美しいなどとはつゆ 思わず着物の裾が汚れて困るという。なんで電灯を つけないのであろうか。といった主旨である。