国際機関で働く者を支える哲学と自戒

摘要

このシリーズもこれが最終回となるので、番外のエピローグとして、昨年五月に筆者がウィーン大学哲学科で行った「二五年の国際機関経験の教訓－二一世紀のグローバル化が進む世界で働くための一つの哲学的基礎」という大それた公開講義の概要を紹介したい。東西比較思想を背景に二五年の国際経験の教訓を語れという難しい依頼に初めは躊躇したが、日頃の自分の断片的考えを整理し、激変する世界情勢により良く対応するための哲学的基盤を、聴講してくれた職場の同僚達と共に考える貴重な機会と捉えて快諾した次第である。さらには、現代哲学徒が未知のグローバルな環境変化の中で働く私達を、もう少し実践哲学的に支えることはできないかと問いかけてみたかったわけである。