移動送信端末のハンドオーバ遅延を考慮した無線メッシュ網マルチキャストルーティングの性能評価

摘要

複数のAPを無線で結び構築した通信インフラである無線メッシュ網は地域網を展開する上でコストが有線網に比べ安価であることや耐災害性の観点から，地方独自のサービスを行うネットワークとして注目されている．これまでの無線メッシュ網の利用としては定点観測によるライブ中継等が存在していたが，これからはモバイル端末の高性能化，無線通信品質の向上から送信ユーザが移動しながらライブ中継を行うケースが考えられる．この時の配信手法としては帯域利用効率の点からマルチキャストが必須であるが，現在の代表的なマルチキャスト手法であるPIM-SMでは網内の全てのAPにPIM-SMに対応したルータを設置する必要がありコストが増大する．そのため我々はコストを抑えつつ，効率的なライブ中継を行う手法としてLayer3マルチキャストとLayer2マルチキャストを併用した2階層マルチキャストを提案している．しかし，これまでの評価では送信ユーザがAP内に一定時間滞在した後の木の特性に焦点を当てており，ハンドオーバが発生した直後の一時的な遅延は考慮していなかった．そこで本稿ではハンドオーバ遅延を考慮した上で再度，既存手法と提案手法の比較を行い，提案方式の有用性を示す．