中東最前線(14)：IS衰退も危険消えず

摘要

二〇一四年六月にシリアとイラクにまたがる地域で「カリフ制国家」の樹立を宣言して世界に衝撃を与えた過激派組織「イスラム国」（IS）は衰退局面に入っている。米軍によれば、米主導の有志連合などの攻勢を受け、この二年間で少なくとも五万人のIS戦闘員が死亡したという。イスラム世界には、イスラム教のウンマ（イスラム共同体）という理想が存在し、ISは西側主導の国際秩序に代わる一つの具体的なモデルをホして各地の若者を引きつけてきた。イスラム教を国家の中でどのように位置付けるかといった議論が決着を見るのは難しい。こうした議論が続く限り、ISは支配地域を減らしながらもウンマという幻想に夢を抱く人たちの間で一定の支持を得ていく可能性がある。