LTEのハンドオーバ特性を最適化する隣接セルリストの動的管理方式

摘要

ハンドオーバの性能改善および走行試験の負担を軽減するため，隣接リストの自律最適化が期待されている·これを受けて，LTE仕様ではANR（Automatic Neighbor Relation）機能が導入され，基地局が移動端末の測定報告に基づき隣接セルを管理することが可能となった．無線カバレッジは運用中に変化するため，特に移動端末から報告される隣接セル数が隣接リストの上限を超える環境では，隣接リストの迅速な更新がハンドオーバ性能を改善する上で不可欠となる．本稿では，隣接リスト更新の収束性を高めて隣接セルの登録漏れの問題を軽減する，隣接リストの動的管理方式を提案する．提案方式では，新規に検出されたセルを既存のセルに対して隣接リストへ優先的に登録することで，運用中に無線カバレッジが変化した際にも迅速かつ正確に隣接リストを更新する．計算機シミュレーションにより，提案方式を適用した場合，隣接セルの登録漏れにより一時的に劣化した無線リンク失敗率が，従来方式より約70％短い時間で回復することを明らかにした．また，新規に検出されたセルの隣接リストへの登録漏れ時間を平均で30％短縮できることを確認した．