石英管封入法による高温超伝導体Hg_(0.8)M_(0.2)Ba_2Ca_2Cu_3O_Y（M=V,Cr,Mn,Mo,Ag,In,Sn,W,Re,Pb,Hf,Ta）の合成

摘要

石英管封入法によって高温超伝導体Hg_(0.8）M_(0.2)Ba_2Ca_2Cu_3O_Y（M=Hg,V,Cr,Mn,Mo,Ag,In,Sn,W,Re,Pb,Hf,Ta）の合成を試みた．得られた結果をもとに，1223相の生成及び1223相のc軸長変化に注目して，下記のように分類してまとめる.（1）In,Wの場合は1223相が生成が見られなかった．（2）Ag,Sn,Pb,Hf,Taの場合には1223相が生成しているがc軸長がM＝Hgの場合とほぼ同等の値であり，1223相への固溶に関して不明であった．Pbに関しては1223結晶粒内に存在することが報告されているが,Ag,Sn,Hf,Taではアニール前後でT_cがM＝Hgの場合と比較して顕著な差が認められなかったので1223相に固溶していない可能性が高い．（3）V,Cr,Mn,Mo,Reの場合M＝Hgに比べて1223相のc軸長が有為に短くなっており，Hgサイトを部分置換していることを示唆された．従来の報告例があるように，Re置換による1223相安定性の向上及びJ_c向上が確認された，また本研究では次の2点を新たな知見として得ることができた．·MnはHgサイトを部分置換し，1223相が得られる合成温度を低温側にシフトさせる．·MoはHgサイトを部分置換し，Re置換と同様にJ_cを向上させる．Mo置換試料のT_cは134Kと高く，アニール処理の前後で変化せずに安定していた．これまでMoはHg-1223超伝導体のドーパソトとして注目されることはなかったが，有望なドーパソトの一つであることが分かった．