細い渦輪の短波長安定性解析

摘要

「渦輪で，新しいタイプの不安定性の可能性があるのだけど，一緒にやりませんか？ 」正確に覚えているわけではないが，確かこんな内容だったと思う．福本康秀氏（九州大学）から共同研究の誘いを受けたのは，私が九州工業大学に赴任して間もない1999年の春だった．新たな研究テーマを模索していた私は誘いに応じ，こうして渦輪の安定性に関する研究がスタートした．それから7年が経ち，今も研究は続いている．これまでの研究で，われわれは「曲率不安定性」という新しいタイプの不安定性を発見した．その成果は3編の論文にまとめられている．受賞対象論文はそのうちの一つである．渦輪の安定性に関するわれわれの研究を振り返り，一連の研究の中でこの論文が果たした役割を中心に，ちょっとした裏話を交えて記す．