阻止域が等リプルな低遅延低域通過最大平たんFIRディジタル微分器の一設計法

摘要

これまでに，高周波に存在するノイズの影響を抑制しつつ変化量抽出が可能な低域通過FIRディジタル微分器の有効性が示されている．特に，平たん基準で通過域を設計すると，高精度な変化量抽出が実現できる．一般に，直線位相特性はフィルタ次数の半分の遅延を有するため，実時間処理を考慮すると通過域における低遅延特性が望まれる．また，急峻な遮断特性を実現するために，阻止域で等リプル特性を有することが望まれる．そこで本稿では，平たんな通過域かつ等リプルな阻止域を有する低遅延低域通過FIRディジタル微分器の設計法を提案する．提案する微分器は，通過域の群遅延をあらかじめ指定した任意の値に設定することが可能であり，低遅延特性を実現できる．提案する微分器の周波数特性は，平たんな通過域を実現する関数と，それを補正する関数の差分で表される．通過域関数は閉じた形で設計される．補正関数はラグランジュ補間に基づいて設計され，阻止域の任意の周波数に伝送零点を実現する．さらに，Remezアルゴリズムを繰り返し適用することで，阻止域で等リプル特性を実現するための最適な伝送零点を求める．