酸化殺菌剤添加海水中におけるステンレス鋼の腐食挙動

摘要

金属材科の微生物腐食は微生物が活発的な環境において，微生物と金属材科の相互作用により誘起（または促進）された腐食現象であり，淡水や海水などの水溶液中に浸漬するステンレス鋼は水中に生息する微生物の影響により，その自然電位が著しく貴化し，孔食や隙間腐食などの局部腐食が発生することがある1），2）．金属材料の微生物腐食を防止するために，電気防食3）や紫外線4）または殺菌剤投入による微生物抑制などの方法が検討されたが，有効かつ実用的な対策はまだ少ない．酸化性殺菌剤は微生物の活動を抑制できるが，殺菌剤投入の量と頻度により，ステンレス鋼の自然電位を上昇させ，かえって局部腐食を引き起こす可能性がある．酸化性殺菌剤が金属の微生物腐食に及ぼす影響については不明な点が多いことから，本研究では船舶バラスト水処理システムに使用されている3種類の酸化性殺菌剤5）を用いて，これらの殺菌剤を添加した海水中に浸漬したステンレス鋼の腐食挙動を調査した．