亜鉛一鉄合金ジンケート処理におけるアルミニウム表面のⅩPSによる検討

摘要

アルミニウム合金上のめっき皮膜の密着性を向上させる前処理方法としては，一般に亜鉛置換法（以下，ジンケート処理と呼ぶ）が使われている。ジンケート処理は，アルカリ性ジンケート置換液にアルミニウム合金を浸潰することによって置換亜鉛層を形成し，その上に銅めっきやニッケルめっきなどを施す。ジンケート処理では，1回目の置換亜鉛層を硝酸ではく離して再度ジンケート処理する方法（以下，ダブルジンケートと呼ぶ）や置換層を鉄やニッケルなどと合金化することにより，密着性が向上すると言われる。しかし，ジンケート処理については不明な点が多くあり，密着性の改善には置換層と素地との界面構造を明確にする必要がある。我々は，ダブルジンケート処理におけるアルミニウム合金表面をⅩ線光電子分光装置（ⅩPS〉により調べ，置換層の硝酸はく離処理において不動態膜中へ亜鉛微粒子が取り込まれること，ダブルジンケート処理で不動態膜が溶解し，露出した亜鉛粒子を核として緻密な亜鉛層が析出することを報告した）。ここでは，亜鉛一鉄合金ジンケート処理の各工程におけるアルミニウム合金表面をⅩPSにより調べたので報告する。