ボールクレーの鉱物学的および表面化学的性質

摘要

ボールクレーの可塑性付与能に最も責献するのは，微細粘土鉱物と有機質から構成される粒径0．05μm以下のコロイド敵城粒子の存在量といわれている。テネシー産ボールクレーの可塑性良好な試料Aと可塑性不良の試料Bにおける0．5μm以下粒分にはほとんど差がないことから，可塑性に関与するコロイドは主に有機質であり，その含有量が品質に最も大きい影響を与えていると予想される。 有機質の腐植酸中のカルポキシル基は，Fe~(3＋)，A1~(3＋)，Ca~(2＋)，Mg~(2＋)など粘土の分散を阻害する多価陽イオンと錯体を形成し，またpH変化に対して大きい緩衝能を有する。 ボールクレーの粉末製品でしばしば生じる可塑性不良は，水中で粘土が個々の粒子に解れ難いことが原因とも言いかえることができる。 原料中に粘土粒子の強い凝集体が多く存在すると，耐火物粒子との混合が不均質となり，また塑性流動に寄与する粘土粒子の数が不足することも起こりうる。テネシー産ボールクレーの粉末製品の品質基準となる鉱物組成·化学組成·粒度とともに，陽イオン交換容量などスラリーの分散性に影響する表面化学的性質を比較し，しばしば生じる可塑性不良の原因について考察した。 1）テネシー産ボールクレーは，約58％のカオリナイト，約10％の雲母粘土鉱物，約28％の石英および約3％のチタン鉱物·鉄鉱物から成っている。 2）粘土原料は，原料の品質基準となる粒度分布，鉱物組成，化学組成などにおいて可塑性に著しい影響を与えるはどの差異がないといえる。 一方，可塑性と密接に関係する粘土の分散性は有機質含有量に影響され，可塑性良好な試料Aと試料1は，可塑性不良な試料Bと試料2に比べて，有機質含有量が多い。 有機質の高分子腐植酸はNaOH系解膠剤添加によるpH変化，電解質増加に対する緩衝能が大きく，分散状態の維持に寄与している。 3）陽イオン交換容量値は，可塑性良好な原料の18～19meq膏00gに比べて，可塑性不良な原料では約1／2の臥6～9．5meq化00gを示した。 微細粒分の差が小さいことから，主に腐植酸量が少ないことに起因している。 試料Aと試料Bとの有機質存在量の差は約2％と推定される。 以上，テネシー産ボールクレー粉末製品における可塑性不良なロットぶれは，主として有機質含有量が少ないことに起因していると考えられる。 4）可塑性の悪い試料Bにフミン酸を粘土量に対し2％添加したものは、試料Aと同等以上の流動性が得られることが確認できた。 可塑性差異の原因は腐食酸の含有量の影響であり、フミン酸の添加より可塑性を回復出来ることが明らかとなった。