他動的運動を用いた人体の関節トルク成分分解

摘要

人間の運動解析は，リハビリテーションやスポーツトレーニングを科学的に行なうために，非常に重要である．本論文では，人間の運動解析の一部として関節トルクの成分分解を行なう．そのためにまず，関節トルクを推定することが必要となる．従来の人体の関節トルク推定は，逆ダイナミクスを解く手法が主流であった．これは，人体のダイナミクスをモデル化し，同定した物理パラメータとカメラなどで計測した運動データから関節トルクを計算する手法である．しかし，この手法はダイナミクスのモデル化誤差，パラメータ同定誤差，運動データ取得時の数値微分誤差，フィルタ誤差などが問題となり，正確な関節トルクを推定することが困難となる場合がある．本論文では，この関節トルク推定システムにより得られた人体の関節トルクに対し，時間軸変換を用いて関節トルクを発生源ごとに成分分解する手法を提案する．本手法は，関節トルクを時間軸変換の特徴付けにより3つの成分に分解した後，静的推定により，剛体リンク系として人体の物理的構造から生じる関節トルクと筋肉の粘性および弾性から生じる関節トルクの3つの成分分解する．これにより，各成分の大きさを定量的に示すことができ，他動的運動における関節トルクの発生源ごとの定量的な評価が行なえるようになる．