微小地震観測に基づく地熱流体の挙動の解明--九重火山地域の例--

摘要

九重硫黄山地城及び八丁原地熱地域において微小地震観測を行った結果，両地域ともに微小地震が多発しているゾーンが存在していることが明らかになった。 この結果と，両地域それぞれにおいて数値シミュレーションを行った結果とを比較したところ，多くの地震は地熱流体が上昇しているゾーンにおいて発生していることが明らかになった。 さらに，数値シミュレーションから推定された微小地震が多発しているゾーンとその周辺部の圧力分布において，両地域ともに微小地震が多発しているゾーンは，周辺部に対して比較的高圧になっていることが示されたことから，地熱流体の上昇部分においては間隙流体圧が上昇し，岩石のせん断強度を低下させるようなことが生じやすくなっているために，微小地震が起こりやすくなっていると推定した。 以上より，地熱地域における微小地震の発生と地熱流体の流体挙動との間には強い関連があることを示すことができた。 また，八丁原地熱地域においては地熱流体の短期間の突発的な上昇を微小地震観測によって捉えることができたことから，微小地震観測によって地熱流体の挙動を捉えることが可能であることを示すことができたと思われる。このように，地熱流体の挙動をモニタリングできる手法として，微小地震観測は有効であることを示すことができたと思われる。