彗星の有機分子とその物質進化への役割

摘要

彗星は天空に大きな弧を描くその美しい姿からほうき星とも呼ばれ，またその突如とした出現から，歴史的には不吉な前兆と捉えられることもあった。しかし，彗星の出現は今も昔も人の心を魅了して止まない魅惑的な天体ショーの1つである。1996年，1997年は大彗星として知られる百武彗星（C／1996 B2 Hyakutake），そしてヘール·ボップ彗星（C／1995 O1 Hale－Bopp）が次々と出現したまさに大雪星の当たり年で，肉眼ではっきりと見えるマイナス等級まで増光し，長きにわたって夜空を彩り続けた（Fig．1a）。