電磁波モードを利用したGIS中部分放電源の同定技術

摘要

国内外の送変電所に設置されているガス絶縁開閉装置(Gas Insulated Switchgear: GIS)は，高電圧印加下での長期間の連続運転を要求される。 設置後30年以上経過した高経年機器の増加に伴い，絶縁破壊事故を未然に防ぐために，早期に絶縁異常を発見することが重要となっている。 絶縁異常を検出する方法として，絶縁破壊の前駆現象である部分放電によって発生する電磁波，音，熱，分解ガス等の物理·化学現象を利用する様々な方法があるが，電磁波検出方法は，検出感度，実時間性の点から有用な方法と考えられている。 しかし，GISタンクのような同軸円筒構造の中では，電磁波はモードと呼ばれる固有の電磁界分布を持つ状態で伝搬する。電磁波を利用した部分放電検出の高度化のためには，GISタンク内でのモードごとの電磁波伝搬特性を明らかにすることが必要である。本稿では，相分離タイプのGIS母線内での電磁波伝搬特性を示すとともに，電磁波モードの特性を利用した部分放電源の位置同定技術について述べる。 また，理論解析が不可能なL字屈折部やT分岐部に関しては，シミュレーションにより得られた電磁波伝搬特性を示す。開発した技術では，これまで不可能であったGIS母線円周方向位置とタンク径方向位置を知ることができる。GISの絶縁破壊の予兆として検出される部分放電発生の位置情報は絶縁破壊リスクの判断に重要な情報であるため，この技術の適用により絶縁診断の高度化が図れると考えられる。