ホットプレス法で作製した窒化ケイ素セラミックスの強度とフラクトグラフィに及ぼす焼結助剤の影響

摘要

窒化ケイ素は，バルク密度が低く，剛健が高く，強度と破壊じん性値が他のセラミックスと比べると高いので，ベアリングやエンジン周りの部材，高温ばね等の構造用部材として利用され，あるいは利用の可能性が検討されている．著者らは，スプレイドライと造粒プロセスを省略したホットプレス法で窒化ケイ素を焼結する方法を提案して，その有用性を検証するために強度特性向上に対する製造プロセスの最適化を行ってきた．これまでに主剤の種類，焼結温度，焼結時間，助剤の配合割合，プレスカ，焼結型形状，試験片採取方位，試験温度の影響を明らかにしている．この製造プロセスで得られた窒化ケイ素の強度と強度信頼性のベスト結果では，1GPaの室温強度レベルで，ワイプル係数m値が29.9の強度信頼性を得ている．しかしながら，焼結前までのプロセスを注意深く処理しないと同一プロセス条件でもワイブル係数m値が30の強度信頼性の再現は難しい．窒化ケイ素セラミックスの焼結性や組織構造には焼結助剤が大きく関わっており，その結果，室温強度，高温強度，熱膨張係数，硬度特性に及ぼす焼結助剤の影響は極めて大きい．本研究では，ホットプレス法で作製した窒化ケイ素の焼結性や強度特性に及ぼす焼結助剤の影響を調べている．特に，その破壊起点部の破面形態を走査型電子顕微鏡で詳細に観察し，焼結助剤が異なる場合の破壊機構の違いを明らかにすることを研究目的としている．