Fe_(1+δ)Se_xTe_(1-x)における超伝導と反強磁性量子臨界点近傍の物性

摘要

近年，鉄のつくる2次元的なフェルミ面上で超伝導が発現するLaFeAsO_(1-x)F_x（超伝導転移温度T_c＝26K）が発見され，一連の化合物の中にBCS限界を超えるT_c＝55 Kに至る物質も発見された．筆者らは鋼酸化物に見られるような酸化物として非常に強い電子相関が高い転移温度を有する超伝導の発現には不可欠であると考えていたが，酸化物ではない鉄系超伝導体の発見以降，その枠を超えてより広く擬2次元構造を有する遍歴電子系の探索を行うことが重要であると認識を改めるにいたった．積層カルコゲナイド，FeTe，FeSeはFig．1で示したように鉄原子がカルコゲンによって四面体配位されていて，そのユニットから出来るFeX層（X＝カルコゲン）が積層した構造を有する．従って近年発見された鉄系超伝導体の中でもっとも単純な構造を有し，超伝導発現の本質に迫る極めて理想的な物質である，と考えられる．