トンネル工事における環境保全に配慮した地下水情報化施工

摘要

これまでのトンネル工事は，岩盤メカニクスやトンネル支保構造などの工学的知見を前提に施工されてきた．近年，都市周辺地城の連絡交通網による都市機能の再生を背景として，市街地の近傍や小土被りのトンネル計画を余儀なくされることが多い．そうした場合，施工に関する課題だけではなく，トンネルルート周辺の自然環境や社会環境も重要課題となり，環境的な要素に対する保全対策が必要不可欠となるケースが多い．一般的に，環境要素は，動植物などの生態系や地下水などの水循環系に関わる自然環境，水田等の土地利用や既設構造物等に関わる生活環境，および工事中から供用後の騒音や振動等の社会環境がある．特に，トンネル工事による影響規模や保全対策を考えると，最もコントロールの難しい要素が，地下水に代表される自然環境保全に対する対策である．加えて，工事による影響を予測し，適切な対策を講じることができるか否かが，信頼性の高い施工やトンネルの経済性を含めた品質向上を実現するための重要課題である．筆者等は，これまで地下水環境保全対策を効果的に検討するための地下水低下予測手法について検討してきた．本研究は，この考え方をさらに進めて，施工中のモニタリングデータを取り込み，再現，予測，対策効果検証を行う手法，すなわち地下水に関する情報化施工法の構築を目的としている．