和歌山県田辺湾内ノ浦の海底，干潟及びコアマモ群落における海底堆積物の化学的特性

摘要

田辺湾は紀伊半島の西岸のほぼ中央部に位置する南北約6km，東西約5．5kmの小湾である。 1940年代からベントス群集に関する調査が行われ（渡部1949；Miyadi1940），田辺湾はメソトロフィツクな湾であり，湾南部が最もベントスが豊富な海域であると報告されている（Miyadi1940）。 しかし，1970年代に入り魚類養殖が開始されるに及んで，その生産量の増加とともに湾内環境は悪化した。 現在でも，南部海域を中心にマダイ、ブリ類をはじめとした魚類養殖が行われており，1980年代後半に4，000t以上に達した生産量は1990年代後半からは1，400～2，200tで推移している。 著者はこの期間の水、底質環境や赤潮発生状況などを検討し，湾内環境の悪化は魚類養殖と密接な関係があ　 り，現在の湾内環境は改善傾向にあるものの富栄養化が完全に解消された状態ではないと結論している（上出2004，2006a）。