ニチニチソウ植物体の葉を直接培養するアジマリシンおよびセルペンチンの新規生産システムの開発

摘要

1960年代より植物培養細胞（カルス）を用い，医薬品や色素など様々な有用代謝産物の生産が世界中で試みられてきたが，実用化に至った例は数例しかない．この最大の原因は，分化した組織細胞から脱分化した培養細胞を誘導する際に，それまで有していた有用代謝産物（主に二次代謝産物）の生産能が消失してしまう点にある．また，細胞の選抜を繰り返すことにより，高生産株の樹立を行ったとしても，有用代謝産物生産能が不安定なため，継代培養を繰り返すうちに生産能が失われてしまうことが多い，カルスの二次代謝産物の生産能の不安定さは，“分化”と“脱分化”が深く関わっている（脱分化状態にあるカルスで　 分化細胞の所産である二次代謝産物を生産させることに矛盾がある）．生産能の不安定さを生じさせる主な要因としては，植物ホルモンや培養環境にょる遺伝子のメチル化や染色体変異などが指摘され，盛んに研究が行われているが，その詳細は解明されていない．この問題を解決するためには，細胞の“脱分化”に関わる遺伝子発現，タンパク質や代謝産物の挙動を解析し，その結果を活用することで，安定した二次代謝能を有する細胞を作製し，二次代謝産物の生産に用いることが重要である．