針葉樹人工林における落葉生産の年変動：間伐と気象条件の影響

摘要

高知県のヒノキとスギが混在する人工林において落葉動態を1991年から1999年まで9年間にわたって調査した。本研究では、間伐と気象要因が落葉量と落葉開始時期の年変動に及ぼす影響を評価することを目的とした。間伐は1993年の3月に実施し、胸高断面積合計で30％の立木を伐採した。間伐前（1991～1992年）におけるヒノキの年間落葉量は約330gm~(-2_yI~(-1)であったが、間伐1～3年後に197～250gm(-2_yI~(-1)に低下した。 この減少量は間伐した胸高断面積の割合とほぼ同じであった。 ヒノキの落葉量は4年後に間伐前の水準真で回復した。Dixonのモデルから求めた7月1日からのヒノキの累積落葉量が年間落葉量の10％になる時期は、9月23日から10月26日であり、年によって33日の差がみられた。 累積落葉量が年間落葉量の10％になる時期と生育期間（3月～10月）の平均気温には正の相関関係がみられ（r_s＝0.75，P＜0.05）、気温の高い年ほどヒノキほ葉を長い期間維持し、生産力が高いことが示唆された。 以上の結果、本調査の林分でほ間伐による環境変化は残存木にとっての強いストレスではなく、速やかに林冠の葉量が回復していると考えられた。