稲発酵粗飼料の全期間給与が交雑種去勢牛の産肉性に及ぼす影響

摘要

水田の有効活用を図るため，飼料イネの利用が求められている。そこで交雑種去勢牛に飼料イネをホールクロップサイレージ（WCS)とした稲発酵粗飼料を全期間給与する試験を実施し，枝肉構成や内臓諸器官重量に及ぼす 影響を検討した。WCS区（3頭）は，肥育前期（4力月）に濃厚飼料を体重の1.5%として稲発酵粗飼料を自由採食 させた。肥育後期（12力月）は濃厚飼料と稲発酵粗飼料を自由採食させた。対照区（4頭）は肥育前期に濃厚飼料 を体重の1.5%としてチモシ一乾草を自由採食させた。肥育後期は濃厚飼料と稲わらを自由採食させた。WCS区は， 対照区に比較して肥育後期の粗飼料の乾物摂取量が多かつた。枝肉成績は両区に差がなかった。また内臓諸器官重 量では，WCS区が対照区に比較して第三胃重量が有意に重く，大網膜脂肪重量は重い傾向を示した。枝肉構成に ついては両区で差がなかった。半腱様筋でWCS区のひ-トコフエロール含量が対照区より有意に多くなり，WCS区 の脂質酸化も抑制される傾向が認められたが，その他の理化学的特性値に両区で大きな違いはなかった。以上より， 交雑種去勢牛の肥育では，稲わらと同様に稲発酵粗飼料を給与することが可能であり，また稲発酵粗飼料に含まれ る"—トコフヱロールにより，牛肉の新たな付加価値も期待できると考えられた。