栃木県における豚用飼料，豚ぶんおよび豚ぶん堆肥の重金属含量の実態

摘要

豚ぶんや豚ぶん堆肥には高濃度のCuが含まれていることが指摘されている．そこで栃木県内で豚用飼料，豚ぶんおよび豚ぶん堆肥中の重金属含有率を調査し，飼料-家畜一堆肥という連鎖系で重金属の動態を把握した．1）豚ぶん中の重金属含量ほ高く，飼料中含有率との相関が高いので，豚ぶん中のCu，ZnおよびMnは飼料に由来することが示された．2）豚ぶんと豚ぶん堆肥中の重金属含有率の相関は低かった．これは各農家によって豚ぶん堆肥の製造方法が異なるため，特に敷料添加の有無やその種類の違いによって差が生じたためであると考えられた．3）各元素含有率の平均値は，豚用飼料から豚ぶん，豚ぶん堆肥になるにつれて増加し，豚用飼料中の重金属は豚ぶんを経て豚ぶん堆肥として5．4～11．8倍に濃縮され，土壌に還元されることになる．4）豚ぶん堆肥には農林水産省通達で示されている特肥料の品質基準を越えるCuを含有するものがあった．5）豚ぶんおよび豚ぶん堆肥の施用によるCuやZnの土壌負荷量は下水汚泥や下水汚泥コンポスト施用による土壌負荷量と同等，もしくはそれ以下であったが，まずは豚ぶんや豚ぶん堆肥中のCu，Znの起源である飼料へのこれらの添加を規制し，土壌負荷量を抑える必要がある．また，CuやZnを含む豚ぶんや豚ぶん堆肥を施用しなければならない場合には，下水汚泥や下水汚泥コソボストの施用基準に準じることが望ましい．