ブサハラ、ァフリカにおける土壌肥料学研究の最前線西アフリカ、サヘル地域での砂漠化とその対処技術

摘要

講座「サブサハラ、ァフリカにおける土壌肥料学研究最 前線」の第二回目である本稿では，西アフリカ、サヘル 地域での土壌肥料学研究の最前線を紹介する.サヘル地域は，狭義にはサハラ砂漠南縁の年平均降水量が200 mm-600 mmの地域を指し（南北約400 km,東西約4000 kmの地域)，最貧国に数えられるセネガル，モ一リタニア，マ リ，ブルキナファソ，ニジエール，チャドの6ケ国にまた がっている（図1).当地域では，少ない降水量と相対的 に養分の少ない極めて砂質な土壌（後述）が相まって食糧 不足が慢性化しており，一度干ばつが発生すると深刻な飢 餓が引き起こされる.国連環境計画（UNEP, 2002)によ れば，1972年-1984年の干ばつの際には少なくとも10 万人が死亡し，1974年にはマリ，ニジヱ一ル，モーリタ ニァで少なくとも75万人が全ての食事を食糧援助に頼る 事態に陥った.なお，その当時のサヘル地域6ケ国の人口 は，国連経済社会局（DESA, 2010)のWorld Population Prospectsによればおよそ3000万人である.さらに，国 連環境計画（UNEP, 1997)によれば，サヘル地域は砂漠 化の危険性が世界で最も高い地域の一つであり，砂漠化が 食糧不足をより深刻にしている.なお，本稿では砂漠化対 処条約（UNCCD)の定義に従い，砂漠化を「乾燥、半乾 燥、ならびに乾燥半湿潤地域における，気候変動や人間活 動を含む様々な要因から引き起こされる土地の劣化」と定 義する.ここで，土地の劣化とは「降雨依存農地，灌漑農 地，放牧地，牧草地，森林，疎開林の生物的または経済的 生産性と複雑性の低下ないしは損失」を意味する.