畑条件下での牛糞、鶏糞堆肥と重過リン酸石灰 の併用による肥料由来の可給態リン酸の不可給 、化の抑制

摘要

我が国は，リン酸質肥料の原料であるりん鉱石を輸入に 頼っているが，そのリン鉱石には限りがある.リン鉱石の2007年の生産量，2008年現在の埋蔵量は，それぞれ 156 x10~61，15,000 x10~1であり（USGS, 2009)，リン鉱石 がすぐさま枯渴することはないと考えられるが，リン酸資 源をいかに有効に活用するかは，リン鉱石が産出されない 我が国の農業にとつて非常に重要な課題である. リン酸資源の有効活用として様々な方法が考えられる.そ のひとつとして，リン酸質肥料の利用効率を向上させること が挙げられる.利用効率向上のためには土壌の可給態リン 酸を不可給化させず土壌に維持させ，作物に利用させるこ とが必要である.Jiaoetal. (2006)は，重過リン酸石灰（以 下，重過石）と牛糞堆肥をそれぞれ4年間連用し，トウモロ コシを栽培した未熟土壌を用い，リン酸の吸着量の違いを吸 着実験により調査した.その結果，重過石連用土壌のリン酸 吸着量が295mg-Pkg~(-1)であったのが，堆肥連用土壌では 229mg-Pkg~(-1)に減少したことを報告した.この要因とし て，Jiao et al.. (2006)は，堆肥の施用で土壌表面の陰電荷が 増加すること，元々吸着していたリン酸の保持力がより弱く なることを指摘した.