アジアにおける多様な土壌と我が国べドロジストによる研究の最前線 5.モンゴル高原における最新土壌研究 --草原土壌の生成，劣化，回復について--

摘要

乾燥地は全陸地面積の47% (大手，2004)にも及び， 灌漑可能な乾燥地では耕地化されて作物栽培が行われるこ ともあるが，基本的には草原を基盤にした牧畜業が営まれ ている.乾燥地における耕地土壌の劣化については舟川ら (2008)がカザフスタンで実施した研究を報告し，持続的 利用のための土壌管理の改善方向を示した.一方，放牧地 においては過放牧による草原や土壌の劣化の問題が無視で きない.モンゴル高原における日本人研究者による調査研 究は，中国内モンゴル自治区では砂漠化対策に関する共同 研究が環境省予算等で早くから実施されてきたが，モンゴ ル国では1990年代初頭の社会主義体制崩壊以降に開始さ れ（高畑，1994；中野、宮重，1995),近年は地球温暖化 の影響把握や草原劣化対策の面から盛んになつてきた.モ ンゴル高原の位置は，ゥクライナ地方からカザフスタンを経て中国内モンゴルに至る半乾燥地植生帯の東端にあり， 植生は属レベルで類似性が高レ、と言われてレ、る（Kawada, 2005).この地域を代表する成帯性土壌は，本講座シリー ズ2で取り上げたカザフスタン等の土壌と共通した特性を 有するカスタノーゼム（栗色土）と考えられる.