トランスポーター研究が土壌、肥料、植物栄養学に もたらすィンパクト 2.鉄栄養研究の進展と 石灰質アル力リ土壌耐性植物の作出

摘要

鉄はさまざまな生体反応に欠かせない元素であり，特に 植物ではクロロフィル生合成に必須であるため，農作物の 鉄欠乏は収量、品質の低下に直結する.高等植物の鉄吸収 機構は，高城成一（1990)によるムギネ酸類の発見を契 機に，還元力によるStrategy-1と鉄キレート物質による Strategy—IIとに大別された.どちらについても，1990年 代半ばから次々と遺伝子が同定された.近年では，鉄吸収 機構そのものから鉄移行、代謝機構へ，さらに鉄欠乏で発 現の誘導される遺伝子群の転写制御機構と転写因子の研究 へと，鉄栄養研究の発展はめざましい. 本講座では，鉄栄養研究における最近の知見と鉄欠乏ス トレス下での遺伝子発現制御機構の解明について紹介す る.また，分子育種によって生み出された，石灰質アル力 リ土壌での鉄欠乏耐性イネについても解説する.